自由律 俳句

言葉は言霊、受け入れる準備があるかで分かれます。

 

私なら、「太陽、風と、出逢いがあれば・・・。」

と詠みたいです。

2019.06.09 朝日新聞 「天声人語」の記事を読んで、

住宅顕信(1961.03.21-1987.02.07)の自由律の俳句を

ネットで検索し、以下、借用掲載しました。

 

住宅顕信の自由律(その一)
○ ずぶぬれて犬ころ
○ 水滴のひとつひとつが笑つている顔だ

○ お茶をついでもらう私がいっぱいになる

 

住宅顕信の自由律(その二)
○ ずぶぬれて犬ころ
○ 鬼とは私のことか豆がまかれる

 

住宅顕信の自由律(その三)

○ 「一人死亡」というデジタルの冷たい表示
○ レントゲンに淋しい胸のうちのぞかれた
○ 若さとはこんな淋しい春なのか
○ 心電図淋しい音立てている胸がある
○ 電話口に来てバイバイが言える子になった
○ 父と子でありさびしい星を見ている
○ かあちゃんが言えて母のない子よ
○ 春風の重い扉だ
○ 氷枕に支えられている天井がある
○ 朝はブラインドの影にしばられていた
○ 窓の冷たい朝月にふれてみる
○ 夜が淋しくて誰かが笑いはじめた

 

住宅顕信の自由律(その四)
○ 面会謝絶の戸を開けて冬がやってくる
○ 点滴と白い月とがぶらさがっている夜
○ 一つの墓を光らせ墓山夕やけ
○ 退院がのびた日の昼月が窓をのぞく
○ 念仏の口が愚痴をゆうてた
○ 赤ん坊の寝顔へそっと戸をしめる(長男初節句)
○ 合掌するその子が蚊をうつ
○ 脈を計っただけの平安な朝です
○ 影もそまつな食事している
○ 消灯の放送があってそれからの月が明るい
○ 秋が来たことをまず聴診器の冷たさ
○ 月、静かに氷枕の氷がくずれる
○ 淋しい犬の犬らしく尾をふる
○ 地をはっても生きていたいみのむし
○ そこを曲がれば月を背に帰るばかり
○ 朝から待っている雲がその顔になる
○ 捨てられた人形がみせたからくり
○ 背中丸めてねむる明日の夢つつんでおく
○ 年の瀬の足二本洗ってもらう
○ 電話口に来てバイバイが言える子になった
○ 春風の重い扉だ
○ かあちゃんが言えて母のない子よ
○ 抱きあげてやれない子の高さに坐る
○ 月が冷たい音落とした
○ ずぶぬれの犬ころ

 

住宅顕信の自由律(その五)
○ 影もそまつな食事をしている
○ 思い出の雲がその顔になる
○ 水滴のひとつが笑っている顔だ
○ すぶぬれて犬ころ
○ 洗面器の中のゆがんだ顔すくいあげる

住宅顕信の自由律(その六)
○ 歩きたい廊下に爽やかな夏の陽がさす
○ 許されたシャワーが朝の虹となる
○ おなべはあたたかい我が家の箸でいただく
○ 四角い僕の夜空にも星が満ちてくる○ 初夏を大きくバッタがとんだ
○ 春夏の重い扉だ
○ お茶をついでもらう私がいっぱいになる

○ 盃にうれしい顔があふれる

住宅顕信の自由律(その七)
   ○ たいくつな病室の窓に雨をいただく
   ○ 雨音にめざめてより降りつづく雨
   ○ 降りはじめた雨の心音
   ○ 朝をおくらせて窓に降る雨
   ○ 坐ることができて昼の雨となる
   ○ 夜の窓に肌寒い雨の曲線
   ○ 早い雨音の秋が来た病室
   ○ 牛乳が届かない雨の朝のけだるさ
   ○ 降れば冷たい春が来るという雨
   ○ 今日も静かに生きて冬の雨の日の選曲
   ○ うすぐらい独りの病室の雨音となる
   ○ 降れば一日雨を見ている窓がある
   ○ ポストが口あけている雨の往来
   ○ 梅雨が冷たいストレッチャーに横たわる
   ○ 淋しさきしませて雨あがりのブランコ

 
住宅顕信の自由律(その八)

○ 若さとはこんな淋しい春なのか

○ かあちゃんが言えて母のない子よ
○ 病んで遠い日のせみの声
○ 何もないポケットに手がある

○ 鬼とは私のことか豆がまかれる
○ 自殺願望、メラメラと燃える火がある

○ 深い夜の底に落とした蚊がなく
○夜が淋しくて誰かが笑いはじめた

○両手に星をつかみたい子のバンザイ

住宅顕信の自由律(その九)
   ○ 病んで遠い日のせみ声
   ○ 水滴のひとつひとつが笑っている顔だ
   ○ とんぼ、薄い羽の夏を病んでいる
   ○ 月明り、青い咳する
   ○ 夜が淋しくて誰かが笑いはじめた
   ○ 焼け跡のにごり水流れる
   ○ 立ちあがればよろめく星空
   ○ 春風の重い扉だ
   ○ 一人の灯をあかあかと点けている
   ○ 月明り、青い咳する
   ○ 風ひたひたと走り去る人の廊下
   ○ 月が冷たい音落とした
   ○ 水音、冬が来ている
   ○ ずぶぬれて犬ころ
   ○ 夜が淋しくて誰かが笑いはじめた


住宅顕信の自由律(その十)
   ○ 水滴のひとつひとつが笑っている顔だ