ダビンチ・ミステリー1

NHKスペシャル    2019年11月15日放送 2:23 - 3:13 NHK総合

ダビンチ・ミステリー1 幻の名画を探せ〜最新科学で真実に迫る

 

(オープニング)

レオナルド・ダビンチが深く関与し、本物だと考えられる絵画はたった14点しか存在しない。まだ見ぬ作品が存在するのではないか!?人類はこの500年、取り憑かれたかのように新しいレオナルドの作品を探し続けてきた。今回は、最先端の科学技術でレオナルドの作品をあばきだそうという調査に密着。

 

ダビンチ・ミステリー

モナ・リザ ”幻の名画”を探せ!密着ルーブル 極秘捜査

レオナルド・ダビンチの没後500年を記念して、ルーブル美術館では今史上最大のダビンチ展が開かれている。この展覧会を心待ちにしていたのが、サカナクションのボーカル山口一郎。山口は、自分が作った音楽がダビンチの作品のように500年後にも残っているか。500年後に残るものをいま作るにはどうしたらいいのかな。などと話した。レオナルドには不思議なことがいくつもある。作品の多くがなぜか未完成のままだということ、本物そっくりの模写が数多く存在すること、そして何より、これほど有名な画家がわずか14点の絵しか残していないこと。そんな不可解さが新たな作品への思いを狂おしいほど掻き立てる。

 

時は16世紀はじめ。混迷の中からルネサンスへと時代の転換期を迎えていたイタリア。新しい芸術をうみだそうと活躍した3人の巨匠が、ミケランジェロラファエロ、レオナルド・ダビンチ。レオナルドの作品数はごくわずか。2年前、1つの大発見が美術界を揺るがす。人類史上最高額で落札された「サルヴァトール・ムンディ」。およそ100年ぶりに姿をあらわした、14枚目のレオナルド作品だった。果たして他にもレオナルドの作品は存在するのか!?極秘裏に、本物だと疑われる2つの絵の調査が進められていた。

 

誰もいないルーブル美術館に、疑わしき絵の1枚が運び込まれた。20年前、個人コレクターが購入して以来、ほとんど人目にはふれてこなかった。今回修復が行われるのを機に初めて調査が実現した。絵画の名前は「糸巻きの聖母」。1501年、レオナルドのもとを訪れた人物が、制作のようすをつぶさに記した手紙が残されていたという。調査中の絵には弱点が。手紙に記されている絵の情報と、調査している絵に差異が見つかった。

 

新たなレオナルドの作品探し。スペインでもう1つの調査プロジェクトが進んでいた。プラド美術館の謎めいた絵。通称「プラドのモナ・リザ」。モナ・リザそっくりの絵だが、モデルの女性には若い印象が。背景も一切描かれていない。作者に関する記録もなく、レオナルドとは異なる人物が描いた作品だと考えられてきた。ところが表面の汚れを落とす作業を行ったときのこと。真っ黒な背景の下から鮮やかな風景画があらわれ、ルーブルモナ・リザととても良く似た風景。レオナルド作品の可能性を大いに感じさせる発見となった。

 

”幻の名画”を探せ!最新科学で真実に迫る

2枚の絵の調査は次の段階へ。レオナルドの作品である可能性が浮かび上がった「プラドのモナ・リザ」。科学技術を用いて解析を行う。用いたのは赤外線反射撮影法。下絵を透視するこの技術により、下絵の制作にレオナルド本人が関わっていた可能性が浮かび上がった。一方、古い手紙との矛盾をかかえる「糸巻きの聖母」。下絵を透視すると、手紙の内容と一致するものが描かれており、手紙に記されていた特徴は下絵段階のものだった可能性が浮かび上がった。下絵に秘められていた真実から、500年の時を経て2つの絵はレオナルド作品へと一歩近づいた。

 

”幻の名画”を探せ!ダビンチの超絶技巧

レオナルド・ダ・ヴィンチの絵にしかない特徴は代表作である作品に秘められているという。モナ・リザは口元の不思議な微笑みに見られる淡い陰影など、卓越した絵画技法がなければ本物だと断言することはできない。果たして「糸巻きの聖母」「プラドのモナリザ」にこうした技法が使われているのか。「プラドのモナリザ」には筋目の筆跡が見られ、「モナ・リザ」にあった透明感が見られなかった。鑑定の結果、プラド美術館はこの絵はレオナルドの作品ではないと結論づけた。

 

「糸巻きの聖母」の汚れを取り除いていくと鮮やかな青色が現れた。当時、著名が画家だけが使えたラピスラズリ。実はレオナルドはラピスラズリだけが持つ青色を好んで使っていたという。「糸巻きの聖母」には「モナ・リザ」との共通点がいくつも見つかった。また画家によると、レオナルドのほとんどが0.1ミリにも満たない点で描かれていたという。

”幻の名画”を探せ!新発見 超絶技巧の秘密

絵画の解析によって本物の可能性がたかまった「糸巻きの聖母」。確証を得るために最先端のX線ラジオグラフィーという装置が導入された。これで絵の輪郭がはっきりと映し出されるという。しかし「モナ・リザ」にX線を当てると絵が消えてしまい、他のレオナルドの作品も同じだった。

 

レオナルドの作品は透明感ある絵の具を15層も塗り重ねる超絶技巧によって描き出されていて、これこそがX線を当てると絵が消えてしまう理由だという。果たして「糸巻きの聖母」にX線を当てるとどうなるのか。

 

”幻の名画”を探せ!ダビンチが追求した世界

レオナルドが目指したものは何か、それを知る手がかりとなる本があるという。バチカン教皇庁図書館にある絵画の書で、レオナルドはこの本の中で光とともに移ろう人間の肌の表情について考えていたという。肌を照らす光を描くことはレオナルドの大胆不敵な挑戦だった。

 

レオナルドのもう一つの特徴は髪の毛で「ジネヴラ・デ・ベンチの肖像」の金髪も1本1本色が違うという。最先端の美容科学はレオナルドが追及した肌と光の仕組みを明らかにしている。レオナルドは自らの絵に理想の世界を追い求めたという。ナビゲーターの山口さんは「狂気じみたダビンチの執念みたいなもの、それに僕は圧倒されてたんだなっていうか」などと語った。

 

”幻の名画”を探せ!真作は発見されるのか

3年に渡った「糸巻きの聖母」の調査。そこにレオナルドが理想の世界は描かれているのか。最先端の技術を持つフィレンツェ国立修復研究所で幅0.2ミリほどの絵のかけらを樹脂で固め、特殊な光をあてて分析。すると絵の断面が浮かび上がり、そこには何層もの塗り重ねがあった。そしてX線ラジオグラフィー調査の結果、絵が消え、レオナルドの超絶技巧が施されていたという。いくつもの真実がこの作品が本物であることを示していた。

 

”幻の名画”を探せ!ダビンチ 残された謎

新たなレオナルド作品を見つけ出す物語は今も続いている。フランスのシャンティイ城から見つかったのは裸のモナリザだった。3年前からルーブル美術館の合同調査が進められている。

(エンディング)